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BOOK

子供が話してくれない、聞いてくれない、なにを話せばいいかわからない・・・ちょっとした「会話のコツ」をつかめば子供との距離がぐっと縮みます

怒って落ちこむその前に 子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ
天野ひかり:著
汐見稔幸:監修
サンクチュアリ出版

あらすじ

アナウンサーであり、NPO法人親子コミュニケーションラボ主宰者の天野ひかりが、自身の子育て経験や多数の親子との関わりを通して見つけた「子供との会話のコツ」。
具体的なシーンを例に挙げ、わかりやすく簡単なやり方で子供に「理解してほしいこと」「わかってほしいこと」を伝え、また子供が話しやすくなる方法を解説している。
子供が話してくれない、なにを思っているかわからない、言うことを聞いてくれない、数々の悩みに対する解決の糸口が見つかる「親子の会話の手引書」ともいえる一冊。

Chapter1 会話以前の大事な話

・親子の会話について考える前に、親が知っておくべきこと
・親の一番大切な役割は「子供の自己肯定感を育てること」
・自己肯定感を鍛えるには10歳まで。その後は成長が遅くなる
など

Chapter2 聴いてくれて話してくれる会話のコツ

【会話のコツ】
子どものよいところ、悪いところ、どちらも認める
会話の目的を明確にする
聞き出そうとしない
ひたすら、うなずく
子どもの言葉をくり返す
子どもの気もちを、言葉に置き換える
「気もち」を受け止めてから、4W1Hで「事実」を聞く(なぜ「Why」は使わない)
指示しない。禁止しない

【ほめ方のコツ】
あたり前のことをできたときに、口に出してほめる
最高のほめ方は第三者からの一言。最低なほめ方は比較の一言

【叱り方のコツ】
主語はIにして叱る

【表情のコツ】
表情と発言を一致させる

【プラスアルファのコツ】
子どもとの距離が縮まる、ちょっとしたコツを知っておく

【男の子・女の子のコツ】
女の子は先を見ながら生きる。男の子はこの瞬間を生きる

Chapter3 シーン別 会話のコツ

今日のできごとを聞きたいとき
宿題をやってほしいとき
テレビやゲームをやめてほしいとき
兄弟姉妹でケンカが始まったとき
友だちと仲よくやっているか聞きたいとき
友だちの悪口を言うとき
いじめられているか知りたいとき
いじめられていることが明確にわかったとき
いじめていることがわかったとき
離婚を伝えるとき
生理や夢精のことを伝えるとき
など

ニャム評

アナウンサーとして活躍されている天野ひかりさんが、Eテレ「すくすく子育て」という番組キャスターを務めた際に様々な育児知識に触れ、それらの知識と自身の育児をもとに親子のコミュニケーション改善を目指し執筆されたのがこの本です。

「今日学校でどうだった?」と聞いても無視する子供。
でもこれは、子供ではなく親(の聞き方)が悪い!というのが天野さんの主張です。
社会経験に乏しく、会話のテクニックや感情の整理がまだうまくできない子供に漠然とした話を振っても、会話のキャッチボールは望めません。
子供のことをもっとよく知り、親の希望を伝えるために、会話する際の「コツ」を会話のプロである天野さんが教えてくれます。
どれも難しいことはなく、すぐにできることばかりなのですが、なかでもいいなと感じた部分をいくつか抜粋してご紹介します。

「親子の会話について考える前に、親が知っておくべきこと」の章では
親の一番大切な役割は「子供の自己肯定感を育てること」
とお話しされています。

天野さんは自己肯定感について「器」という表現を使っています。
自己肯定する力である「器」が大きくないと、知識や情報、社会的ルール、他者とのコミュニケーションなどをたくさん入れておくことができない、というわけです。
しかし世の中のお母さんたちは「器」を大きくする前に、勉強やしつけ、ルールをどんどん入れようとするので、「器」の育っていない子供たちはすべてを受け取ることができず、それを見てお母さんはイライラして叱りつける・・・という負のループに陥っているというのです。

これは、ボーク重子さんの「非認知能力の育て方」という本が非常にわかりやすいです。
偏差値やテストなど数値化できる能力を「認知能力」といい、忍耐力や思いやり、粘り強さやくじけない心など、数値化できない能力を「非認知能力」といいます。
学力重視の社会では早期の知育教育に走りがちですが、いくら幼児期に知育教育を詰め込んでも非認知能力がじゅうぶんに育っていなければ「器からジャージャーとこぼれていってしまう」状態になっているということです。
こういったことは近年の育児書では必ず紹介されている情報なのですが、それでも超早期の知育教育がおさまる気配はありませんね。
むしろ、社会不安が高まるにつれて幼児の知育教育が早期化していっているように感じます。
「いい学校を卒業していい会社に就職させたい」と思うのはわからないでもないですが、「いい学校」「いい会社」というのも多様化の進む現代ではどんどん特定しにくくなっていくと思います。
私の勤めた大企業も新卒者は超有名大学卒業者ばかりで、でも現場で仕事をすると打たれ弱くて半年で休職したり、いつまでたっても仕事をおぼえなかったり、「高学歴ってなんだ」とモヤモヤしました。
ま、これは低学歴者のひがみかもしれませんけどね。

・最近の子供は甘やかされている?
「幼稚園や学校で甘やかされているから家庭では厳しくしたほうがいいのでは」という質問を受けることがあるそうですが、天野さんはこう答えています。

たしかに現代の教育機関では、モンスターペアレントなどをおそれて、子どもを叱ることは少ないかもしれません。
しかしそのぶん、たくさんほめられているか、認められているか、と考えると正直疑問が残ります。せめて親だけは、子どもを丸ごと認めましょう。
(P41より引用)

私見ですが、幼稚園や教育機関が子供を甘やかしているとは感じません。
よほど教育理念のある学校や園でなければ、「最低限の安全の確保と文部科学省の指示を順守する」ことしかしていないように思います。
つまり、子供に対して積極的な働きかけや人間としての深い関わりといったものは期待できないと思っています。
「幼稚園や学校は甘やかしもしないし、厳しくもしない」ので、自分が大事にされていると子供が感じる場所は家庭しかないのです。
ですから、せめて家庭では思いっきり子供を甘やかし、かわいがり、大切に大切に接してあげることがなにより重要だと思っています。

・どうして親は指示をしてしまうの?
なぜ親は禁止と指示の言葉が多くなってしまうのか、天野さんは理由として「子供は所有物で、言うことを聞かせるものという考えが色濃くあった」ことを挙げています。
明治から昭和へ近代化が進むなかでも、子供は労働力であったり「国力」という名の戦闘力にされることが当然とされていた時代では、子供に命令する育て方のほうが効率的だったのだろうと考察し、しかし現代では自立を求められる時代となり、「親と子は、もう強者と弱者という関係性ではありません」と記しています。

このことはもっと広く周知されるべきだと私も強く思います。
「子供は所有物」というのは、現代の日本に根強く残っている感覚なのではないでしょうか。
「子供に言うことを聞かせたい」と思っていること自体が人間としての対等な関係を築こうとしていない事実ではないかと思います。
ひとりの人間として子供と対話することを強く意識していかないと、「言うことを聞かせる」ことに走ってしまいます。
命令したり指示するのは楽だし簡単ですからね。
でも、子供を「従順」で「なんでも言うことを聞く」「指示待ち人間」に育てたいかどうか、胸に手を当ててよく考えてほしいと強く願います。

・どうしても宿題をやらない子はどうする?
とてもいいなと思ったのが、「宿題ができなかったとき、親も一緒に言い訳を考える」という方法です。

「先生に言うための、宿題ができなかった言い訳を、いっしょに考えようか」
「おうちのお手伝いをしていたので、忘れちゃいましたって言うのはどう?」

なんと、お母さんも共犯になっちゃうという方法なのですが、個人的にすっごく支持します。

宿題をやらなかったあなたのこと、お母さんは認める。だけど、社会(学校)では認められないという現実を、言い訳を考えることによって、子どもに理解させることが大切です。
「甘い!」と思われるかもしれませんが、10歳まではどこまでも子どものそのままを認めることに徹しましょう。
(P123より引用)

だいたい、小学校低学年は宿題なんかなくていいんですから。
宿題をやるだけで「すごい!うちの子はなんてえらいんだろう!」くらいにほめていいと思います。
我が家のニャ娘は小2の算数の宿題をする際、まず今日の問題を見て「簡単に理解できる」と思う内容であればドリルの解答を丸写ししています。
自分で解いた問題を自分で丸つけしないといけないので、最初から解答を写せば丸つけも間違いなくできるというわけです。
この方法は積極的にオススメはしませんが、2けたの足し算引き算程度で家庭学習する重要性を私が感じないので、我が家ではOK!としています。

・テレビやゲームをやめてほしいとき
「そもそも、テレビやゲームって、子どもに悪影響なのでしょうか?」
と天野さんは問いかけます。
私も「テレビ、ゲームは子供に悪影響」と言うのに科学的根拠が伴わないのはおかしいと感じます。
アメリカで「テレビを見る子供は学力が低い」という研究が発表され、それが日本にも伝わったことで「テレビを見ると頭が悪くなる」という考えが浸透しましたが、その後の詳細な調査で「テレビが子供の成長を妨げる」のではなく「子供にテレビをずっと見せている家庭は、子供のすべてのことにおいて無関心である」ことがわかったのだそうです。
しかし「テレビを見るとバカになる」というのはわかりやすくキャッチーですし、育児をするうえでの言い訳にしやすいんじゃないかな、と思います。
子供が言うことを聞かなくてイライラするとき、「テレビばっかり見てないで!」とか言いやすいですもんね。
責任転嫁されるテレビも気の毒です。

ここでは「子供にルールを決めさせる」という解決法が示されていますが、我が家もこの方法にしています。
ニャ娘は「スプラトゥーン2」が大好きで、ガチでSとAを行ったり来たりくらいのウデマエです。
ひたすらやりこまないと上達しないと思いますが、ニャ娘とは「一日のゲームの時間」を決めています。
我が家のゲーム時間は一日2時間30分。
8歳には長いと思いますが、「3年生になったらちょっと忙しくなるから、そうしたら一日2時間にしようね」と約束しています。
そして、一回のプレイ時間は20分、15分休憩を挟んでまた20分ゲームするというルールです。

これはもちろん目を休ませるためです。
「目が悪くなる」と子供に教えても、いまはよく見えているので説得力がないんですよね。
先日、NHKで眼球が変形するという番組をたまたま見たのですが、ディスプレイを長時間注視することで眼軸が奥に伸びていっている(横長になる)という研究結果でした。
「眼軸近視」というそうですが、これは大変なことになった(@_@;)と家族で驚き、それまでニンテンドースイッチ本体の画面を見て遊んでいたのを、テレビモニター出力で遊ぶようにしました。
いびつな眼球の写真を見たニャ娘もなにか不穏なものを感じ取ったらしく、自分でタイマーをセットして遊んでいます。
自分で遊ぶ時間をコントロールしているので、親から言われてしぶしぶやめる、ということにはならないようです。

・「買って!」「欲しい!」が止まらないとき
小さいころはスーパーの玩具つきお菓子のコーナーでよく勃発する事件ですよね。

本書の解決法としては
子供が欲しがるものに対して「それいいよね!」「このおもちゃはどこがすごいのか教えて?」など親も興味を持つことで子供の欲求が満たされる
親を納得させられるプレゼン力も身につく
欲しい理由をつねに考えさせられることにより、「本当に欲しいかどうか」が自分でわかるようになる

と紹介されていますが、我が家でもそのようになっています。

ニャ娘が「これ欲しいな」と言い出したとき、その商品のどこがいいのか、どうして欲しいのか、これを買ったらどのくらい使うか、その値段は適切か、といったことをじっくり話すと、話しているうちに「やっぱりいいや」と気が変わることが多くあります。
どうしても欲しいものは、いろいろ話し合った上で「それでもやっぱり欲しい」と揺るぎません。
ニャ娘はあまり物を欲しがらないので、なにか欲しいものが出てきたときは可能であれば家族で相談してできるだけ購入しています。
じっくりと話し合って、親が納得すれば買ってもらえるとわかっているようで、対話力やプレゼン力みたいなものは身につくかもしれません。

本書の全編を通して共通しているのは「子供の気持ちに寄り添って」という願いと「がんばっているお母さんを応援したい」というエールです。
全体的にとてもわかりやすく書かれていて、具体的なシチュエーションを想定した声かけの例が紹介されているので、すぐに取り入れることができると思います。
子供とコミュニケーションがうまく取れず、ストレスを感じていたり悩んでいる方にぜひ手に取ってほしい一冊です。