魔女ののろいアメ
草野あきこ:作
ひがしちから:絵
PHP研究所
おはなし
「おねえちゃんなんか、だいきらい」
小学1年生のサキは、おもいバッグをかたにかけてあるいています。
きょうまでにかえさなければいけない、としょかんでかりた本をかえしにいくのです。
サキのかりた本が5さつ。
おねえちゃんのかりた本が10さつ。
じぶんでかえしにいくって言ったのに、おねえちゃんはさっさとあそびにいってしまいました。
サキのおやつをだまってたべてしまって、たべていないと言ったり、サキのケシゴムをかってにもっていったり、おねえちゃんのふくをちょっとかりただけなのに、すごくおこったり。
くいしんぼうのうそつきで、けちんぼで、おこりんぼうだ。
石をけりながらあるいていると、みたことのない屋台(やたい)がありました。
ピンクにみずいろ、きいろにむらさき、いろんないろのかわいいアメがならんでいます。
くろいぼうしにくろいふく、めがねをかけたおばあさんがサキにこえをかけました。
「おじょうちゃん、アメいらないかい?」
おいしそうなアメをみていると、おばあさんはサキにこんなことをいいました。
「おじょうちゃんに、おすすめの、とっておきのアメがあるんだけどね」
それはなんと、「のろいアメ」だったのです。
ちいさなビンに、みずあめみたいなものがはいっています。
だれかのわるぐちを10こ言いながらぐるぐるまぜると、のろいアメができます。
そのアメをたべると、にがくてからくてすっぱくて、まずさのあまり気絶(きぜつ)して、一日じゅう目がさめないのだとおばあさんは言いました。
サキはおそろしいとおもいましたが、おばあさんに「そのアメをおねえちゃんにたべさせるといいよ」と言われると、うけとってしまったのです。
ここがおすすめ
第65回青少年読書感想文全国コンクール課題図書に選ばれた児童図書です。
小学1年生のサキには、おねえちゃんがいます。
でも、このおねえちゃんがひどいおねえちゃんなのです。
サキのおやつを勝手に食べたり、サキの引き出しから黙って物を取ったり、おまけに朝はいくら起こされても全然起きない、図書館の本だって返しに行かない。
物を勝手に取っていくなんて、いくら家族でも泥棒みたいじゃんとビックリしましたが。
こんなおねえちゃんだったら、いてもうれしくありませんね。
蛇足ですが私の姉はたいへんよくできた子供だったので、妹の私にとっては素晴らしい姉でした。
家族みんな姉が大好きで、いまでも姉の言うことなら間違いないとなかば盲目的に信頼し、ややシスコン気味でもあります。笑
ですから、このお話を読んで、サキのおねえちゃんには呆れました。
でも、子供なんてだいたいこんなものなんでしょうかね。
しかも、図書館の本を返しにいくのに、おねえちゃんの本なんか置いていってしまえばいいのにと思いましたが、お母さんに「おねえちゃんの本も返してきてね」と頼まれてしまったのです。
これはお母さんが悪い。
お母さんはおねえちゃんに「借りたものは返す」という最低限のルールを教えるべきではないのか??
じつはこのくだりが一番モヤモヤポイントでした。笑
お母さんが悪いよ、これは。
さて、サキは魔女のアメ屋さんの前を通り、「のろいアメ」を20円で買ってしまいます。
悪口を10個言いながらまぜると、のろいアメができると聞いて、サキはおねえちゃんの悪口をひとつずつ考えます。
でも、20個でも30個でも出てくると思っていたのに、考えてみるとそんなに思い浮かびません。
それに、おねえちゃんにはいいところもあったなと、サキはいろんなことを思い出します。
「おねえちゃんなんか、だいきらい」
そう思っていたけれど、のろいアメを食べさせたいと思うほど、おねえちゃんをだいきらいだったかどうか、サキはだんだんわからなくなっていきます。
こののろいアメは完成するのですが、のろいアメがいったいどうなるのかは、読んでのお楽しみです。
途中までは予想通りの展開ですが、最後にちょっと予想外の筋書きがあって、そこはとても面白く読みました。
魔女は、人間がだれかの悪口を言って、だれかが苦しむところを見たいという、いかにも魔女らしい悪いことを考えているのですが、なるほど人間の心はそこまで悪いもんじゃないな、と思わせるような、ほっこりとするお話でした。
兄姉のいる子にとっては「あるある」で共感をおぼえるのかもしれませんが、やはり私はこのおねえちゃんの言動を「あるある」とは思えず、共感できませんでした。
家族とはいえ、ひとの物を黙って取るのは完全アウトですし、お母さんがおねえちゃんに社会のルールを教えないのは違和感が拭えません。
たかが小学生のやること、かもしれませんが、こういう感覚で大人になるってちょっと迷惑だな、と思ってしまいました。
私の勤める会社はフリーアドレスですが、まだ固定席だったころ、デスクの上に小さなおかしやガムを置いている人が多くいました。
で、夜中まで会社に残って働いている人が、他人のデスクからおかしやガムを取って食べていくんです。
もちろん本人の承諾なんか得ていません。
泥棒じゃん!と思いますが、取っている本人は「このくらいいいだろう」と思っているわけです。
取られるのがイヤで、みんな引き出しにしまうようになりましたが、それでも引き出しを勝手に開けられて食べられていました。
ここまでくると立派な窃盗だろうと思うんですけどね・・・
私はデスクの引き出しに鍵をかけていました。
なんだかんだとケチをつけるところが多くあり、私個人としては子供全般に受け入れられるような筋書きかどうか、疑問点の多い本でした。
課題図書ってどういう基準で選ばれているんですかね。。。
本の構成としては、すべてのページに挿し絵があり、文も短めに改行されていて、小学校低学年の子供でもひとりで読めると思います。
また、ストーリーの展開も流れるように滑らかで、このあとどうなるんだろうというドキドキとハラハラがうまく盛り込まれ、次のページを早く見たいと思わせるスピード感があります。
全編通して読み聞かせするには15分から20分ほどかかるので、寝る前の読み聞かせをするなら半分に分けてもいいと思います。
半分でやめると続きが気になって子供からクレームがつきますが。笑
読み聞かせを楽しみと思わせるには、あえて途中でやめるというのもアリなので、ぜひ家庭で試してみてください。
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ヨシタケシンスケ:作・絵