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半世紀にわたり読み継がれてきた名作絵本「ねえさんといもうと」が酒井駒子さんの訳と絵によって新しく生まれ変わりました

ねえさんといもうと
シャーロット・ゾロトウ:文
酒井駒子:絵・訳
あすなろ書房

おはなし

ねえさんといもうとは、いつもいっしょ。
どんなときだって、ねえさんはいもうとのめんどうをみます。
あそんでいるときも、いもうとがどうろに出ていかないか見ているし、ブランコにものせてくれるし、がっこうへいくときは、手をつないでくれます。
なにからなにまでおせわをしてくれるねえさんは、できないことなんてないんだ、といもうとはおもっていました。
ねえさんはなんでもしっていて、なんでもおしえてくれます。
ねえさんのいうとおりにしていれば、まちがいないのです。

でも、あるひ、いもうとはひとりになりたいとおもいました。
それで、ねえさんがおちゃのしたくをしているあいだに、そうっと出ていってしまいました。
おうちを出て、どんどんあるいて、くさはらまでやってきました。
いもうとがじっとしていると、ねえさんのこえがきこえてきます。
いもうとをさがしてあちこちあるいていたねえさんは、とうとう、なきだしてしまいました・・・。

ここがおすすめ

シャーロット・ゾロトウの代表作であり、半世紀にわたり読み継がれてきた名作。
酒井駒子さんの手により新たな息吹が吹き込まれました。
・・・といいつつ、じつは私はオリジナル版を読んだことがありませんでした。
絵本ナビで調べたところ、作者であるシャーロット・ゾロトウというアメリカの女性は、出版社に勤めながら50冊以上もの本を書き続けた絵本作家でもあったそうです。
本を創作して、それを出版できるという素晴らしい二足のわらじを完遂した彼女がたいへんにうらやましく、またなんと素晴らしい生き方だろうと感銘を受けました。
ほんとうにうらやましい・・・(*´ω`*)

私がこの絵本を手にしたのは、酒井駒子さんの表紙を書店で見かけたからでした。
数多の本が並ぶ書店にいても、駒子さんの絵だけは必ず目に入ってきます。
見つけた瞬間、このふたりの姉妹の絵に心をぎゅっとつかまれてしまいました。
なんてかわいらしいふたりなの・・・!
大切な宝物をみつけたような気持ちで買って帰り、さっそくその晩の読み聞かせでニャ娘と一緒に読みました。

物語は、とても面倒見のいいお姉さんと、その妹のお話です。
とてもやさしく、なんでも知っていて、妹のことを全部やってくれる素晴らしいお姉さん。
けれども、妹はふと、自分ひとりになってみたいと思うのです。
そして黙ってトコトコと出て行ってしまうのですが、妹はそこで見たことのないお姉さんを知ることになります。
妹を探しに来たお姉さんは、妹を見つけられずに泣き出します。
妹が泣いたとき、いつもお姉さんはやさしくしてくれました。
でもいまは、お姉さんをなぐさめる人はだれもいない・・・。
妹はお姉さんのそばに行き、ハンカチを出して、こう言います。
「さあ、おはな チンして」
いつもお姉さんがしてくれるように。
なんでもできると思っていたお姉さんが、ただの小さな女の子だと知り、そして妹は自分がお姉さんをなぐさめてあげられることを知ります。
小さな成長を、やさしいまなざしでそっと見つめるようなこの絵本は、大人にこそ読んでほしい一冊です。
小さな小さな宝石箱をそっと開けてみるような、美しくかわいらしい世界をのぞき込むことができます。

そしてなんといっても、駒子さんの挿し絵の美しさ!
絵をながめるだけでもぜいたくな時間をすごしているような気持ちにさせてくれる、画集のような絵本でもあります。
駒子さんが描く子供のかわいらしさ、はかなさ、美しさ、そしてきらめき。
どのページを開いてもうっとりするような、愛らしい世界がそこにあります。
「ロンパーちゃんとふうせん」が好きな方は、ぜひ手にしてみてください。


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