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BOOK

「ねこのおんせん」というタイトルからは想像もできない展開にギョッとします。小さな子供が初めて出合うミステリー絵本

ねこのおんせん
別所実:作
佐野洋子:絵
教育画劇

おはなし

アーバン村のナガールさんとこには、タガールというねこがいます。
としとったせいか、ねずみがはしっていても目をあけようともしません。

オムドンテ火山にはアンテパンおんせんがあって、ねこによくきくとひょうばんです。
げんきのないねこを3日もおんせんに入れると、たちまちげんきになるというのです。
ナガールさんはタガールをつれて、アンテパンおんせんへ行くことにしました。

ながくけわしいみちをあるいて、ようやくアンテパンおんせんへたどりついたナガールさん。
そこには、アンテパンおんせんをかんりするドートンはかせがいました。
「やあ、アンテパンおんせんにようこそ。ここへきたからには、もうすぐにげんきになりますよ」
それをきいてナガールさんはとてもよろこびました。

しかし、そのあとにはかせが言ったことばは、なにかちょっとおかしいのです・・・。

ここがおすすめ

旅先のホテルにあった絵本棚に、この絵本はひっそりと置かれていました。

ニャ娘が眠る前の読み聞かせにとふたりで絵本を探していたときにこのタイトルを見つけ、大好きな佐野洋子さんの絵ということもあり、ネコ好きな私たちは迷わずこの絵本を手に取りました。
そして部屋へ戻って読み始め、突然の展開に驚愕しました。

途中までスラスラと読んでいた私が、ドートンはかせの言葉を読もうとして
「えっ?・・・えええ??」
と思わず驚きの声を口に出してしまったため、それまで静かに聞いていたニャ娘もがばっと起き上がって「どうしたの?」と騒ぎ出す始末。
ネコを元気にしたいと思うやさしいナガールさんの物語だと思って読んでいた私は、いきなり目の前でネコだましをくらったような衝撃を受けました。

いま、これを読んでくださっているあなたは、残念ですがこの衝撃を味わうことはできません。
この絵本が驚きの展開になると知ってしまいましたからね。
ごめんなさい。
でも、小さな子供に読んであげるときには、なんのヒントも与えずに読んであげてください。
心優しい飼い主がネコのために奮闘し、険しい山道を越えてやっと温泉にたどりついたと思ったら、まさかの展開に度肝を抜かれます。
これは、小さな子供が初めて出合うミステリーではないかと私は思いました。

発行が古く、いまは書店などでは見かけませんが、本が好きな人にはぜひとも一読してみていただきたい絵本です。
絵本を読んでこんな衝撃を受けたのは初めてでした。
その後もどうしても忘れられず、帰宅してからこの本を取り寄せ、小学校の読み聞かせボランティアで子供たちに読んでみました。
おとなしく聞き入っていた子供たちの表情が、だんだん怪訝になっていき、教室のなかが凍りついたように静まり返っていきました。
読み終わったあとに「どうだった?」と聞いてみると、「こわかったけどすごいおもしろかった!」と上々の評判。
さらに友だちからその話を聞いたらしく、翌日ニャ娘のクラスの子供たちから「私も『ねこのおんせん』読んでほしかった!」とリクエストをもらうほどの反響でした。

佐野洋子さんの絵がまた、最高なんですね。
衝撃の展開にさしかかるページの絵が、ものすごいこわいんです。
しかも、ナガールさんとドートンはかせの会話のシーンなのに、全然関係ない絵なんです。笑
なのに強烈なインパクトで物語にコミットしていて、何度見てもこわいし笑えます。
LINEスタンプになったら絶対買いたいです。

絵本は時々、大人向けのミステリーよりも恐ろしさを醸し出すことがあるんだなとしみじみ思いました。
年長さんから小学校低学年くらいの子供におすすめです。
ぜひとも、度肝を抜かれていただきたい。

この絵本、出版が古いので、取り扱いも品薄です。
Amazonでは中古で高値がついていたので、7netや楽天で定価の取り扱いがあるかどうかチェックしてみてください。
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