事情を知らない転校生がグイグイくる。
川村拓:著
スクゥエア・エニックス
あらすじ
ぼく、高田太陽。
新しく転校した小学校で、後ろの席に座っているクラスメイト・西村あかねさんはなぜかみんなから「死神」と呼ばれているんだ。
死神・・・
死神の西村さん・・・
なんてかっこいいあだななんだ・・・!!
どうして「死神」ってあだなになったのか西村さんに聞いてみたら
「そんなの知らないけど、たぶん目がぎょろっとしていて、死んだ魚みたいだからじゃない?」
って言っていた。
しかも
「高田くんも私に近づかないほうがいいよ」
って。
その理由は
『呪い』がうつるから
だって。
かっけぇーーー!!
いいなぁ、ぼくも西村さんみたいなかっこいい威力がほしい。
西村さんは死神みたいにクールでかっこいいから、ぼくもっと西村さんと仲良くなりたいんだ。
西村さんと一緒にいるのって、本当に楽しいから。
ニャム評
著者の川村拓さん(@kawamurataku)は #事情を知らない転校生がグイグイくる というハッシュタグでツイッターに掲載しています。
ツイッターのモーメントでまとめられているので一気読みも可能。
ぜひ読んでみてください!
書籍でも発刊されました。
ニャ娘がもう少しお姉さんになったら読ませてあげたいと思い、私はkindle版を購入しました。
西村さんは、ようするにいじめられているわけです。
目がぎょろっとしているから、つけられたあだなは「死神」。
「西村が使ってたほうき」は呪われていて、さわられると呪われて、一緒に写真に収まると心霊写真になるらしい。
んなアホなことがあるか。
そんな西村さんとクラスメイトの前に、超ファンタジー脳の天然ボーイが現れました。
高田くんはみんなから「死神」と呼ばれている西村さんが、うらやましくてしかたありません。
だってなんかすごいかっこいいから!
呪いのパワーがあるなんてかっこいい!
高田くんのマイペースぶりにクラスメイトは戸惑い、西村さんは赤面します。
ひとりの男の子の登場によって、教室という小さな檻の中のルールはいともたやすく覆されてしまいました。
そして高田くんはひたむきに西村さんに憧れ、西村さんの当惑をものともせずグイグイと迫っていきます。
だって西村さんは、高田くんの憧れだから。
物語では高田くんは超マイペースの天然ボーイとして描かれていますが、彼は本当は「正解」をわかっている子なんだろうと思います。
ファンタジーワールドを脳内にいっぱい詰め込んで、自分が作り出した世界のなかの基準で、西村さんを大好きになったのです。
クラスメイトが言っているから、自分も西村さんを「死神」と言う。
そういう、「誰かの基準」は高田くんにはどうでもいいことで、関係ないのです。
高田くんみたいに自分の世界の基準を持っている人が、どのくらいいるだろうと思いました。
大人でさえ、確固たる自分の基準を持っている人は多くありません。
社会人になってさえ、狭い職場で誰かをターゲットにしたいじめが日常的に行われています。
自分がターゲットになりたくないから、声の大きい人に合わせて自分も同化する。
「自分」さえも手放してしまっている人が、残念ながらどれほど多いことか。
物語のなかで、西村さんが高田くんにこんなことを言うシーンがあります。
「高田くん 一緒に帰るのはもうやめよう」
「高田くんに友達ができたのに私が邪魔しちゃ悪いから」
西村さんは誰からもほめられずに長い間過ごしてきたので、自己評価がとても低い少女なのです。
自分に価値があると思えず、自分の存在は邪魔だという思考になってしまっているのです。
一方、高田くんは転校する前に在学していた小学校が少人数で、全校生徒と友だちだったという男の子です。
他者と良い感情のやりとりを積み重ねてきた高田くんは、自己評価の高いまっすぐで素直な少年なのです。
いじめをする者の愚かさは言わずもがなですが、この物語の核はそこではありません。
誰かのいいところを見て、それを相手に伝えることで生まれる魔法のお話なのです。
おお、まるで高田くん脳内ワールドそのもの。
わたしの大好きなエピソードは先述したお話の⑦です。
【創作】事情を知らない転校生がグイグイくる ⑦#事情を知らない転校生がグイグイくる pic.twitter.com/XYN8KBeNXI
— 川村拓(仮)@転校生 発売中! (@kawamurataku) 2018年4月14日
高田くんはファンタジー脳すぎるアレな子ですが笑、自分がいいと思うものをまっすぐにほめることのできる、徳の高い子です。
人間がもっとも人間らしく美しいのは、他者をほめることだろうと私は思っています。
ギャグマンガなのですが、心に虹がかかったような、美しいものを見た喜びみたいなものを読後に感じました。
ぜひたくさんの人に読んでほしいイチオシマンガです。