おばけのアッチ ほっぺたぺろりん
角野栄子:作
佐々木洋子:絵
ポプラ社
おはなし
おばけのアッチは、「レストラン・ヒバリ」のコックさん。
「びっくりばこ ちゃわんむし」とか、「ぶたはな ピザ」とか、「にっこり バーグ」なんておもしろいメニューをいろいろ作ります。
アッチがすんでいるのは、「レストラン・ヒバリ」のやねうら。
やねうらには、チとキというふたごのねずみもすんでいます。
チとキはいつもなかよし。
アッチはそれが、うらやましいのでした。
なかよしの女の子のエッちゃんにはママとパパがいるし、のらねこボンにはしろねこのおくさんがいるし、だけどアッチにはかぞくやきょうだいがいないのです。
そんなある日、ドラキュラじょうにすんでいるドララちゃんから「そくたつ」というてがみがとどきました。
「そくたつ」というのは、いそいでしらせたいことがあるときに出すてがみです。
アッチがいそいでてがみをよむと、こんなことがかいてありました。
くろぐろ森でおばけの子をひろいました。
小さなおばけの子です。
アッチくんにそっくりよ。
とってもくいしんぼなの。
てがみをよんで、アッチはびっくり。
ドララちゃんは、つかまえたおばけの子を、かごにいれてかっているというのです。
「もしかしたら、ぼくのおとうとかもしれない!」
ドララちゃんはドラキュラのまごです。
もしかしたら、おばけの子を大きくそだてて、そのあとたべちゃうかもしれない。
アッチはいそいでドララちゃんのところへとんでいきました。
ここがおすすめ
「おばけのアッチ」シリーズに、おばけのドッチが初登場します。
アッチのおとうとみたいな、ちいさくてかわいい男の子のおばけです。
ねずみのチとキを見て、きょうだいがいることをうらやましく思っていたアッチは、「小さなおばけの子」と聞いて、もしかしたら自分の弟かもしれないと思います。
アッチって、初めて絵本に登場したときからひとりぼっちなんですよね。
エッちゃんやボンやチとキに出会って、ひとりぼっちではなくなったけれど、家族がいないんです。
そんなアッチのさみしい気持ちと、ドッチをお世話するおにいちゃんのような気持ちがお話のなかからひしひしと伝わってきます。
そんなセンチメンタルな気持ちを吹っ飛ばすのが、ドララちゃん。
ドララちゃんはキュートな女の子ですが、ドラキュラの孫娘で、かなり自己中で横暴な女王様みたいな性格です。
ドララちゃんからの手紙を読んでアッチが「おばけの子が食べられちゃうかもしれない」と心配するという思考回路がすごいなと思いますが、そんなふうに思わせるのがドララちゃんのおそろしいところ。
このちょっぴり不気味なところがいいんですよね。
それにしても、このお話のなかで一番驚いたのは、のらねこボンに奥さんがいたということでした。
ボンって結婚してたんだ!
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佐々木洋子:絵
ポプラ社
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