BOOK

きみの足は、「やばいもの」から逃げるためにある。そして、「だいじなひと」をさがすためにある。にげてさがして、すてきななにかが見つかりますように。

にげて さがして
ヨシタケシンスケ
赤ちゃんとママ社

おはなし

よのなかには、いろんな人がいる。
かけっこが早かったり、絵がうまかったり、算数が苦手だったり。
そして、そのなかには「そうぞうりょくをつかうのがにがてなひと」も、いる。

自分じゃない誰かの気持ちを考えるのが苦手なその人は、ひどいことをしたりひどいことを言ってくる。
そんなことをしたら相手がどんなに傷つくか、それを想像するのが苦手だから。
相手のことがわからないから。

にげろ!
ひどいことをする人から。
がまんしなくていい。
とにかくにげろ。
君の足は「やばいものからにげるため」にある。

そしてもうひとつ、君の足は「きみをまもってくれるひと」「きみをわかってくれるひと」を探しに行くことだってできる。

つらいことをがまんせずに逃げることと、自分を守るために動くこと。
ヨシタケシンスケ流のサバイバル術をやさしい絵本仕立てにした、子供にも大人にも読んでほしい一冊。

ここがおすすめ

「もしものせかい」で新しい形の物語を作り上げたヨシタケシンスケさんの絵本、第二弾とも言える作品です。
やさしい文章と絵による絵本形式でありながら、その内容はシリアスな状況から逃げ出す方法を伝えています。
虐待やネグレクト、差別やハラスメントなど心身を脅かす状況から逃げ出せずに苦しんでいる人へ、「そこから逃げていいんだ、そして自分を守ってくれるものを探しに行くんだ」とアドバイスしています。

この物語では、自分に対して危害を加える対象を「やばいもの」とはっきり示し、「そうぞうりょくをつかうのがにがてなひと」と具体的に記述しています。
想像力に乏しい人は、自分の言動によって相手が傷つくということを考えたり理解することができないため、驚くようなひどいことを言ったり、常識を超えた行動をしたりします。
そういった人への対処術は、「とにかく逃げる」。
話の通じない相手にいくら良識を説いても理解は得られません。
一方的にダメージを受けるだけなので、さっさと逃げろというわけです。

私はあまり他人を信用していないので(笑)、なんかやばいなと感じたらすぐに逃げ出すのですが、逃げ方を知らずにじっとがまんしている人や、相手しないといけないと思っている人をたまに見かけます。
大きな会社に勤めていたときによく見かけたのが、大声で怒鳴る人でした。
こういう人は、「想像力がない」のではなく、むしろ「どうやったら相手が言うことを聞くか」を熟知しているので、怒鳴って萎縮する人を素早く見抜き、威圧して召使いのように扱います。
一方で、自分より立場の強い人間にはヘラヘラ、ペコペコするので、イヌ社会で生きているんだろうと思いますが、このイヌに逆らえずに言うことを聞いてしまう人がいるんですよね。
大人になっても逃げられない人の場合、「自分が悪者になりたくない」という利己的な考えもあると思うのでなかなか口を挟めませんが、未成年にはこういった「逃げ方ハンドブック」みたいなものを渡してあげたいと思います。
お金もなく、知恵もなく、どうしたらいいかわからない子供たちに、そこから逃げる方法を具体的に指南するアイテムは、もっと多くあってもいいのではと感じます。
この本は具体的な方法が載っているわけではありませんが、「そうか、いやなことはいやだって言ってもいいんだ」と気づかせてくれるきっかけをくれるものだと思っています。

東京都では、東京都児童虐待帽子推進キャラクター「OSEKKAIくん」なるものがいて、クリアファイルが小学校で配られました。
このOSEKKAIくん、かたつむりみたいなカラに入ったナゾのキャラなんですが、ちょっと。。。キモかわいいです。
クリアファイルには「みんなで、まもる。」と大きく書いてあり、「東京都子供への虐待の防止等に関する条例」が記載してあります。
そして、LINEと電話の相談窓口が載っています。
虐待する保護者は必ず虐待の事実を隠しますし、当然「虐待ではない」と否定するので、被虐待児は「自分が虐待を受けている」と理解する機会がほぼないわけです。
こういうものを学校で配布すれば、被虐待児が自分を守る方法を直接知ることができます。
お役所もたまにはいいことするじゃないですか。
残念ながらあんまり認知されてないみたいですけどね。

OSEKKAIくんについて
東京OSEKKAI化計画とは? 東京都福祉保健局

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