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自閉症の僕が跳びはねる理由「僕たちは、美しい物を見たり、楽しかったことを思い出したりした時、心からの笑顔が出ます。」

自閉症の僕が跳びはねる理由
自閉症の僕が跳びはねる理由2
東田直樹:著

世界中で翻訳されている本書は、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
また、NHKで紹介されて知った方もいらっしゃるかもしれません。

タイトルのとおり、著者である直樹くんは重度の自閉症スペクトラムです。
彼はお母さんが考案した紙のキーボードで会話する方法を取得し、努力を重ねた結果PCで文章を作成することができるようになりました。
本書は、自閉症スペクトラムとはなにか、自閉症者自身によって解説された、世界に類を見ない貴重な書籍です。

ここでひとつのQAを引用いたします。

-表情が乏しいのはどうしてですか?

みんなが、僕たちと同じような考えではないからです。
ずっと困っているのは、みんなが笑っている時に僕が笑えないことです。
(中略)
人の批判をしたり、人をばかにしたり、人をだましたりすることでは、僕たちは笑えないのです。
僕たちは、美しい物を見たり、楽しかったことを思い出したりした時、心からの笑顔が出ます。
でもそれは、みんなの見ていない時です。
(引用ここまで 角川文庫42、43ページ)

きっと彼自身を見たら、別人が書いたのではないかと思うかもしれません。
しかし、彼の脳内ではたしかにこのような言葉が語られているのです。

彼の綴る文章は詩的で、哲学的で、社会学的な視野に満ちています。
13歳の少年が書いたとは思えないほど洗練されています。

自閉症者が身近にいる方は、本書を読むことで、昨日とはまったく違った世界が見えてくるような希望を見出せるのではないかと思います。
自閉症に限らず、様々なハンディキャップについても、本書を通して深い理解を得られるのではと思います。

「自閉症の僕が跳びはねる理由2」は、高校生になった直樹くんが再び執筆した続編です。
あれから彼の思考がさらに成長し、熟成されていっているのがわかります。

この地球上で、人間だけがなぜ「他人」との関係を望むのか、「善いことをしたい」という根源的な欲求はなにか、そういったことを考えさせられます。